2020年、研究者たちはさらなる高度な観測を目指し、5万トンの超純水タンクに微量の「ガドリニウム」を添加し、新生スーパーカミオカンデとしての観測をスタートさせた。これは特に超新星爆発から飛来する反ニュートリノの検出効率を大幅に向上させるものだ。
この計画は、オルガノにとっても新たな挑戦となった。ガドリニウムは極めて高い純度で均一に水中に溶解させる必要があり、一方で添加によって新たな不純物が発生しないように超純水の品質を維持しなければならない。そこでオルガノは、東京大学宇宙線研究所と緊密に連携して、新たな水処理技術の開発に挑んだ。すなわち、水中の微量な不純物を除去しつつ、ガドリニウム自体は保持するという、特殊な機能を持つ「イオン交換樹脂」の開発だった。
「ガドリニウムと他の不純物を賢く分離する技術が必要とされました。そこで、ガドリニウムの安定的な溶解と、それに伴う水質変化への対応、そして長期的な純度維持システムを構築するために、我々が取ったのが技術者の連携でした。オルガノは当時からいくつかの事業部門に分かれていましたが、半導体関係の技術開発を担う技術者を、部門を超えて連携させることで、より高度なご要望に応える技術を提供することができました」と望月は説明する。
そして、「スーパーカミオカンデは、新入社員の私にとって、夢のプロジェクトでした。研究者の方々と同じ目的に向かって挑戦する。我々の持てる技術と知見のすべてを注ぎ込み、新たな知恵でプロジェクトの推進に貢献する。その喜びは、ビジネスを超えた達成感があります。こうしたアカデミックな夢のあるプロジェクトを、若い社員もぜひ経験してほしい。その経験は必ずや血となり肉となって自身を成長させてくれます。そして、オルガノもまた、水を通して夢を提供できる企業であり続けたいです」と望月の言葉に熱がこもる。
5万トンの超純水のスクリーンは、ニュートリノが発する微かな光とともに、夢の力を信じ、水の力で応えるオルガノの揺るぎない使命感を映し出している。
やがて、この時のガドリニウムに関するオルガノの協力が、スーパーカミオカンデの約10倍の体積を持つ次世代ニュートリノ観測装置「ハイパーカミオカンデ」プロジェクトへとつながっていく。研究者たちの情熱によって加速度的に進化する観測装置を通して、この先も宇宙の謎は次々とヴェールを脱いでいくことだろう。それはまさに宇宙形成のドラマの解明であり、オルガノは宇宙劇場を上映するパートナーとしてともに挑み、支えていく。
(c)Kamioka Observatory,ICRR(Institute for
Cosmic Ray
Research The University of Tokyo)
(c)NIKKEN
SEKKEI